ドラマ「重版出来」とボブ・ディランの意外な関係

Posted on 2016年4月26日火曜日


先日、テレビで『重版出来』という新ドラマを横目で見ていたら、冒頭のシーンで馴染みのあるメロディが流れた。
私はすぐに画面を凝視してしまった。ボブの歌のメロディにそっくりだったのだ。
すぐにこれは「風に吹かれて」のアレンジだと気付いた。

「風に吹かれて」は頻繁に、節操もなく日本のテレビで使われてるし、ボブは絶賛ジャパンツアー中。
なんの不思議もない(ことも無いが)。
でもその曲はすぐ珍妙な展開で全く別の曲になっていった。

ネットで調べてみると、どうやらユニコーンの「エコー」という曲で、ドラマの主題歌であると分かった。
ドラマを最後まで見ると、大団円すると同時に主題歌が流れてきた。
クリソツなのは最初のAメロだけ。
最初は嫌でも日本語歌詞で歌われた「風に吹かれて」かと思ってしまうレベル。
しかしすぐに別の曲だと分かる。

分かったところでなんだか腑に落ちないのは、どんな意図でその曲に「風に吹かれて」のメロディラインが使われているのか全く不明だからだ。「風に吹かれて」っぽい曲でもないし、ボブ・ディランっぽい曲でもないし。

まーでも、ボブの曲自体、元ネタがあるのだ。
ボブはサンプリングが好きだし、フォークはそもそも伝承や黒人霊歌から作られてきた。
ボブは長く曲作りにその手法を取り入れ(というか開き直り)、数々のパクリ名曲を生み出してきた。「風に吹かれて」はその一つに過ぎない。


「そのひとつに過ぎないのです!」


音楽はそもそも先人たちが奏でてきたメロディの更新と再生であると、私は考えている。
音楽家でもない人が好き勝手なことを言ってんなぁと思ってくれていい。
誰しも過去の人が作ったものに影響されて自分の作品を創出する。
だとしたらオリジナルというのは本当に存在するのだろうか?
だいたいヒップホップやR&Bなんかはサンプリングで作られてるわけだし、フォークもそうだ。オマージュやリスペクトはどの芸術にも存在する。
ボブ・ディランは古い音楽のメロディラインを引っ張り出してきてオリジナルソングに消化する。ファンは元ネタを見つけ出して過去の音楽を発見する。大瀧詠一も同様だ。
これは一種の探求と出会いであり、ファンの喜びになることもある。

ちょっと待て。
じゃあ何でもかんでも頂戴していいのかっていうと世間ではそうでもないらしい。お茶の間の人たちは意外とパクリもんに厳しいようだ。
少し前に爆発的ヒットをしたサム・スミスの Stay With Me もトム・ペティの I Won't Back Down と類似してるということで著作権を払うことになっていたし、中国の音楽シーンは日本のポップソングと類似しているものが多いらしい(未検証)。

こういうのは「黙ってやるな」&「気付かず使用してたのなら謝れ(場合によっては金を払え)」で解決する物事だろう。

問題なのは過去の作品を自分の形にして作り直したときの、センス。その一言に尽きる。
つまり新しいものに作り変えたときの完成度。サンプリングもただ切り貼りしてるわけじゃないんだし。



ユニコーンは正直、名前ぐらいしか知らない。
最近、再結成したとかなんとか。有名なバンドだとは思う…。

ああ〜、なるほど奥田民生か!

私はよく知らないのだが、奥田民生はサンプリング技法をよく使うらしい。確かにパフィーの「これが私の生きる道」(だったっけ?)はビートルズで出来ている。あれは名曲だし、天才的サンプリング技術と言えるだろう。
そういえば彼は ボブ・ディランの My Back Pages をカバーしたりしていた。ボブ・ディラン好きには違いないのだろう。でも、だったら逆に、ここまであからさまなことはしないでも良かったのでは。むしろリスペクトしすぎて暴走…?





あ、ちなみに新曲だし、ネットで聞くのは無理でした。
なのでドラマ「重版出来」の第2話をYouTubeで見つけてきた。
挿入部分とエンディングを見ると聴けます。

開始後1分はギターのみ、23分辺りと、42分辺りは歌付き。

まー、何回聞いても出だしのメロディがこんだけ「風」してるから、そのまま「風」にならないのが不自然でならない。そんなこと思うのはボブ・ディランファンだけなのかもしれないけど。


BOB DYLAN - Blowin' in the Wind




Blowin' in the Wind の元ネタは No More Auction Block という1865年頃の古いゴスペルである。
「競売はもうたくさん」と黒人奴隷の売買について歌う悲しい曲である。
若い頃はボブ自身も歌っているが、ネットでボブver.を見つけられなかったので、当時ボブも聞いていたはずのオデッタさんで。

Odetta - No More Auction Block For Me




そっくりだ!

ボブもこの曲をベースに「風に吹かれて」を作ったことは隠していない。当時のフォーク仲間、ハッピー・トラウムも話してたっぽいし。

古い曲をリスペクトして自身のオリジナルに移し替えるなら、やはり堂々としてたほうがいい。それはパクリではなく、先人の功績を伝えてゆく者として、もはや使命とも言えるだろう。
同時にもっとも大事なのは、なぜその曲を自分の作品に作り変えるのかという信条のようなものだと思う。それがなければただのパクリと言われても仕方がないよね。

まー、音楽家でもない人が勝手に言ってるだけですけど。


「重版出来」は火曜夜10時!!
私はあれから見てないです!!爆


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