4/12のライブレポ in 大阪フェスティバルホール②

Posted on 2016年4月18日月曜日

熊本地震で被災された九州の方々にお悔やみとお見舞いを申し上げます。

私にも熊本に住む祖父母、親戚、福岡に住む友人らがおります。
一刻も早く復旧し平穏な日々が戻るよう、私も遠くからですができるだけ支援していきたいと思います。


さて、今回はライブレポ①の続きです。
前回はグッズの話で終わってしまったので、今日はちゃんと楽曲のレポをやります。

一昨日は名古屋、明日からまた東京、そして千秋楽は横浜と、まだ8公演も残っています。
これからライブへ行かれる方へボブとバンドの世界観を堪能するための一助になれば。
(これからのコンサート日程はオフィシャルサイトで)


4月12日@大阪フェスティバルホール②


最初に、この日のボブを見て私が何を感じたか、言っておこう。

このライブはもはやボブ・ディランのライブではない。
ボブ・ディランという男がボーカルを務めるひとつのロックバンドのライブなんだ!

ってことだ。

全ては2012年頃まではボブが続けていた「日替わりセットリスト」をやめたところから始まっていると思う。
「日替わりセットリスト」というのは一見すると凄いことなのだが(楽曲が無数にあるから)、いわばそれは「昔のヒットソングを歌う往年の名歌手」がすることであり、ボブ自身が自分の存在について迷っていたことの証拠でもあったかもしれない。
自分は往年の歌手か、それとも現役か、と。

これは私が連れとライブの後で歩きながら話したことだが、「ボブ・ディラン&ヒズ・バンド」という「バンド」はひとつの世界観を作ることに成功し、もはや「ボブ・ディラン」を表現しているわけではないのではないか、ということだ。
固定リストに文句を言うのはもうやめようと思う(でもやっぱり3年も同じ曲を歌うなんてクレイジーだと思う)。

この夜のライブはそこまでたどり着くことができたライブであったし、なによりボブとバンドマンたちの演奏にすっかり納得してしまったからだ。

そういえば、ボブはその昔グレイトフル・デッドに入ろうとしていたが(笑)、バンドで音を作り上げることに憧れていたのだろうか。
それはすでに達成されたと思う。


具体的な楽曲レビューは以下。
まずはこの日のセットリストから。




    Osaka, Japan 
  Festival Hall 
    April 12, 2016  

1. Things Have Changed (Bob center stage) 
2. She Belongs To Me (Bob center stage with harp) 
3. Beyond Here Lies Nothin' (Bob on piano) 
4. What'll I Do (Bob center stage) 
5. Duquesne Whistle (Bob on piano) 
6. Melancholy Mood (Bob center stage) 
7. Pay In Blood (Bob center stage) 
8. I'm A Fool To Want You (Bob center stage) 
9. That Old Black Magic (Bob center stage) 
10. Tangled Up In Blue (Bob center stage with harp then on piano)  
(intermission) 
11. High Water (For Charley Patton) (Bob center stage) 
12. Why Try To Change Me Now (Bob center stage) 
13. Early Roman Kings (Bob on piano) 
14. The Night We Called It A Day (Bob center stage) 
15. Spirit On The Water (Bob on piano) 
16. Scarlet Town (Bob center stage) 
17. All Or Nothing At All (Bob center stage) 
18. Long And Wasted Years (Bob center stage) 
19. Autumn Leaves (Bob center stage)    
(encore) 
20. Blowin' In The Wind (Bob on piano) 
21. Love Sick (Bob center stage)


緑…Tempest 5曲
水色…Shadows in the Night 4曲
赤…新譜 Fallen Angels 3曲
ピンク…2000年代に発表された曲 4曲
黒…2000年以前に発表された曲 4曲

(※以前の記事とは色を変えてあります)



東京初日から数えて6公演目である。
セットリストに変化がないことは分かっていた。
これは諦めというより、確信に近い。
本当は初日で演ってくれた That Lucky Old Sun が聴きたかったが、それも淡い期待に過ぎない。


1曲目の Things Have Changed が始まった。
暗い照明の中の長いイントロ。
以前もこんな感じだったとは思うが、オープニングにしては暗すぎないか?
前のめりになってステージを見つめることに集中していて、正直この曲の出来はよく覚えていないが、いつものボブ、いつものバンドという感じで、ホッとした。
ボブの顔はフェイクのマイクに隠されてよく見えない。
ボブ・ディランはステージで人に見つめられることを嫌うと聞いたことがある。ステージ裏でも「見つめないように」と注意された人がいるとかいないとか。
しかし私のいる「ステージの(観客席から向かって)右側」なら、実はボブはよく見える。ボブは右手でマイクを握り、左手を開くようにして体を斜めに向ける。「はい、どうぞ」と言わんばかりに、私の正面に向かうボブ。おかげ何度も目があったような気がするのだが、私はどんな顔をしていたのだろうか。なんか恥ずかしいな。
間奏では、手持ち無沙汰そうに後ろに2歩ほどさがり暗闇に紛れようしていた。


2曲目、She Belongs To Me には感動した。2年前も思ったが、この曲は比較的原形をとどめてる曲だと思う。
50年も前に発表された曲が今のボブの世界観を受け継ぎながらも色あせない事実、ボブの歴史と曲のクオリティに改めて感動した。


3曲目、曲の前に飲み物を口に含んでいるのが見えた。
Beyond Here Lies Nothin' は好きな曲だが、やや大人し目の仕上がり。ピアノに座るボブがよく見えた。私のような身長の低い者でも、前に2メートルの人が座らない限りステージが見えるのは嬉しい。ただボブの足先まで見ようと思ったら、やはり前の人の頭は邪魔だった。ボブがどんな靴を履いていたのか、未だよくわからない。


4曲目、ガツンときた!What'll I Do だ。
いや、別にガツンとくるような曲じゃないけど、とにかくボブの声がこれまでの曲の中でもっとも伸びていた。メロウなイントロが始まり、誰かが「フォー」と歓声を上げる。最近のアルバムからの披露をファンは喜んでいるよ!という表現だ。ボブも嬉しいはずだ。ボブはヒットソング専門の昔のスターじゃない。今も評価を変えつつある「現役」なのだ。
センターマイクで美しく歌う What'll I Do 。アルバムより断然良い出来だ。ドニーのマンドリン(たぶん)の音がポロポロと切なく、うっかり座席にもたれて目を閉じそうになった。もちろんそれも座席鑑賞の醍醐味だ。今回、ディラン側がホール公演を望んだのは、Shadows in the NightFallen Angels のようなスタンダードナンバーをゆっくり聞いてほしいからだと思う。斜め前の女性はすでに座席にもたれかかっていた。こんな贅沢があるとは、誰も予想していなかったのではなかろうか。


5曲目の Duquesne Whistle
ボブがピアノに移動する。座る前に奥で飲み物を飲むボブ。
この曲はステージが明るくなると分かっていたので、こっそりiPhoneを構える(撮影禁止です)。
まだ照明が暗いうちからイントロのリフ。陽気なサウンドが暗いステージ上に、まるで調律でもするかのように響く。一気にドラムが入り、ライトアップ!歓声!!ボブが歌い出した。隣の人に迷惑にならないように手早くシャッターを切る。ちょっと光が強すぎる。たぶん白飛びしただろうなと思うが、ひとつ仕事を終えたような満足感。
さて、4月4日は大絶賛された Duquesne Whistle 。今夜は?
うーん…ノリがイマイチ。
失速していくバンド。ボブの声も What'll I Do のほうが良かった。
まぁ、こういうことは往々にしてあることだ。途中、曲の展開がおかしくなったところがあった。間奏が短く済まされたような、もしくはメンバー誰かの早とちりか、そんな気がするのだが。

言っておきますが撮影禁止です

6曲目は Melancholy Mood
今回は5、6、7曲目の声の出が良いと聞いていたので、この曲にも期待していた。
長いイントロ。シナトラバージョンも同じイントロで、異様に長い。
歌い出しまで、センターマイクから離れて待つボブ。またも暗闇に紛れそうだ。ふらふらとトニー(ベース)の前で動いている。知らない人が聞いたら、「ボブ歌詞忘れたんじゃ?」と慌ててしまうかもしれない。私は知っててもちょっとハラハラしてしまった。
でも歌自体はあっという間に終わるのだった。
正直、発表された音源のほうが抑揚が効いてて良いように思った。でもライティングと歌の雰囲気が重なっていい感じだ。


7曲目、Pay In Blood!!文句無しのかっこよさ。
今のボブ、そしてバンドにこれほどマッチしてる曲も少ないのではないか。今回一番楽しみにしてた曲でもある。「俺は血で払う。お前のな」と言われ続けて、勘弁してください(泣)という気持ちになった。
ときどき左向きにキメ顔を作るボブ。
つまりボブさんがこちらを向くわけで、本当に怖かったです。

なんども言いますが撮影禁止です

8曲目は I'm A Fool To Want You
そのままセンターで歌い始めるボブ。イントロからすでにうっとりしてくる。さっきまで険しい表情で Pay in blood!!! But not my own!! とか歌ってたくせに、突然、恋の悩みに切り替え(笑)。 この変わり身の早さには少し困惑する。世界観の統一という点では、ややとっ散らかってしまってるのではないか。それでも、いろんなボブが見れる・聴けるわけだから、以前の「日替わりセットリスト」に匹敵する面白さを持っている。


9曲目は That Old Black Magic だった。
今回、ワイルドカード枠だと思われていた9曲目だが、東京初日で That Lucky Old Sun を歌って、二日目は That Old Black Magic に変更して以来、変化していない。
私はシングルカットされた「Melancholy Mood」を購入していないので、ボブ版 That Old Black Magic を聴くのは初めて。
明るいイントロが流れてきてワクワク。ボブは軽妙に体を揺らしながらマイクに近づき、歌い出す。ときどき笑顔。
これまでの流れを無視するような明るい曲調は度肝を抜かれたが、張り詰めていたムードに少し柔らかさが生まれたような、そんな瞬間。満足。


10曲目 の Tangled Up In Blue には、連れが震えるほど感動していた。
控えめな演奏と同時にボソボソと囁くような歌い出しだったと思う。一瞬「ん?」と思った。最初の Tangled up in blue! と同時にバンドの音が大きくなり、会場は大歓声。2番を歌い、ハーモニカで聞かせた後にピアノに移動した。
これももう40年も前の曲だ。何度も歌詞が変えられ、ボブとともに歩んできたようなそんな歌ではないだろうか。これからも歌い続けてもらいたい。


ミナサン!アリガト!!


ボブが大きな声を発した!
分かっていたけどどよめく会場。
2014年のときも、「トモダチ」とか言ってたような気がするが。
毎回新しい日本語を仕入れていく気だろうか。
英語で「またすぐ戻ってくるよ」的なことを言って、ボブとバンドは暗闇に消えていった。

ここで20分の休憩。
早い。
くたくただ。
20分の間にトイレへ行く人、もらったポスターを広げる人、「撮影禁止」の札を持って歩き回る人など、いろいろだ(というか最後の人は仕事)。
私と連れは、前半戦の短評を言い合う。

そういえば、ライブ前と休憩中に菅野ヘッケル氏が近くを通った。
目立つね、あの人は。


後半戦に続く




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