4/12のライブレポ in 大阪フェスティバルホール③

Posted on 2016年4月19日火曜日


九州で被災された方にお悔やみとお見舞いを申し上げます。
幸いにも、私の祖父母、親戚、猫たち、友人は怪我もなく無事でした。揺れが減りテレビで報道される頻度も減ってきました。しかし被災された方々の震災は、これからが本番とも言えるでしょう。物資、避難所のプライバシー確保、片付け、家の再建などは多くの助けがなければ達成されません。
安心して暮らせる日々が一刻も早く戻るよう、日本全国で支援していかなければと思います。

◇◇◇

今回もライブレポです。

①グッズ編②前半の続きになります。

一曲一曲、本当に覚えてるのかって?
いやー、正直覚えてないですよ。笑
だから覚えてることだけ書いてます。その間に気づいたこととか、思い出したこととか。
もちろんメモとか取ってないから、勘違いもあるかもしれません。
ボブが何回飲み物を飲んだか、とかね。

それでは後半戦にお付き合いくださいm(*_ _)m



4月12日@大阪フェスティバルホール


当日のセットリスト

   Osaka, Japan 
    Festival Hall 
    April 12, 2016  

1. Things Have Changed (Bob center stage) 
2. She Belongs To Me (Bob center stage with harp) 
3. Beyond Here Lies Nothin' (Bob on piano) 
4. What'll I Do (Bob center stage) 
5. Duquesne Whistle (Bob on piano) 
6. Melancholy Mood (Bob center stage) 
7. Pay In Blood (Bob center stage) 
8. I'm A Fool To Want You (Bob center stage) 
9. That Old Black Magic (Bob center stage) 
10. Tangled Up In Blue (Bob center stage with harp then on piano)  
(intermission) 
11. High Water (For Charley Patton) (Bob center stage) 
12. Why Try To Change Me Now (Bob center stage) 
13. Early Roman Kings (Bob on piano) 
14.   The Night We Called It A Day (Bob center stage) 
15. Spirit On The Water (Bob on piano) 
16. Scarlet Town (Bob center stage) 
17. All Or Nothing At All (Bob center stage) 
18. Long And Wasted Years (Bob center stage) 
19. Autumn Leaves (Bob center stage)    
(encore) 
20. Blowin' In The Wind (Bob on piano)
21. Love Sick (Bob center stage)


緑…Tempest
水色…Shadows in the Night
赤…新譜 Fallen Angels
ピンク…2000年以降に発表された曲
黒…2000年以前に発表された曲


20分の休憩は長いようで短かった。
座って見てただけの私がこんなに疲れるんだから、74歳のボブはもっと疲れてるんじゃないだろうか。「いいよ、いいよ。何時間でも待つよ。もう少し休ませてあげてよ。」などと言ってたら、場内の照明が薄暗くなった。アナウンスもあっただろう。よく覚えていない。


11曲目、固定リストの一つである Hign Water が始まった。
またも薄暗いままのギターリフ。手拍子でも始まりそうな雰囲気だ。
ボブがセンターマイクに近づいてきた。拍手と歓声!同時に、ドラムが鳴り響き High Water のカントリーなサウンドが広がった。ボブの声は相変わらずしわがれていてスモーキー。しかし前半と比べて伸びはない。休憩を挟んだからだろう。個人的には乗り切れずに終わった。

この曲の後だったろうか。ステージが暗転し、バンドも観客も次の曲の準備に入ろうとしたその刹那…、


「ぼぶ・でぃら〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん」


後方の客席から誰かがボブを呼んだ!笑
女性のような、少年のような声だった。
これまでボブへ様々な呼びかけを聞いてきたが、こんなに自然で日本語的で力の抜けた呼びかけは聞いたことがない!
今回はホールで、ライブハウスよりも皆静かに聞く印象だったから余計に度肝を抜かれてしまった。
この勇気に敬服だ!!!!


12曲目、Why Try To Change Me Now。これは…最高だった!!
High Water が準備運動になったんだろうか。この夜のShadows in the Night の曲は基本的に声が出ていて完成度が高い。あまりに気持ち良すぎて、疲れている日に来てたら眠ってしまってたのではないだろうか。ボブの美声が聴ける一曲。
前の座席の女性はこの辺りからかなり座席に沈み込んでいた。おかげで視界が開けて、ステージが見えやすくなった。


13曲目のEarly Roman Kings はとてつもなく素晴らしかった。
これが私にとってこの夜のベストだ。
予想外だった。実は大して期待していない曲の一つだったのだ。
Early Roman Kings Tempestの中でも Tin Angel Scarlet Town に次ぐ「私にとってなんだかよくわからない曲」の一つである。
最初はもちろん「苦行スタートだな(笑)」などと思いながら聴き始めた。スチュ(客席から見て左端の人)がマラカスを振り始めた。ああ、小刻みなリズム。見てるだけで腱鞘炎になりそうだ。いくら演奏を変えてるとはいえこの3年間ずっと同じ曲を演ってたら、私だったらキレてマラカスを放り投げるだろう。もちろんプロのアーティストにそんな思いはあるわけないし、日々進化をしてるからこそ3年も同じ曲が出来るんだと思う。チャレンジの毎日なのだ。見習わなければならない。
とはいえ、出だしはやはり単調だった。だから余計なことを考えたりしていたのだが、ぼんやりしていると、ピアノに座るボブが生き生きとし出し、バンドの音がどんどん盛り上がっていく。アウトロが即興演奏のような熱気を帯びていく。バンドはここぞとばかりに存在をアピールし、ボブのピアノはこの夜一番の破壊力を見せた。
終わった後思わず「なにあれ!すげえ!!」と声に出してしまった。あのクオリティを、ぜひライブアルバムに!!!!そう願わずにいられない。


14曲目は The Night We Called It A Day
これも Shadows in the Night からの曲で、やはり美しかった。安定した歌唱力で聴かせてくれる。ボブには珍しいことだ(笑)。


15曲目の Spirit On The Water では不思議なことが起きた。
Early Roman KingsThe Night We Called It A Day と良い演奏が続いたのでこちらも期待したのだが、ボブのピアノが失速。なぜか突然、片手弾きに!
音の厚みが減って拍子抜けしていたら曲も終わりに近づいてきた。
お決まりの「No!!」を言ったのは会場の後方、一部の人だった。私の周囲のお客さんたちは恥ずかしがり屋さんばかりだったようで、わたしも一人で叫ぶわけにいかない。一緒に来ていた連れは、お決まりのアクション(合いの手とか)を曲に求めることを良しとしないので(恥ずかしいだけでは?)、はなから言う気はないっぽい。
ボブは嬉しいのかな?それを知りたいのだが。


16曲目は Scarlet Town 。予想通りの苦行だった…。
この夜のワーストと言える。
この曲はもともと動きがない。それに加えてこの夜のステージでも、バンドにしろ、ボブにしろ、動きがなかった。
ボブは突っ立ってセンターマイク。もちろん動かしてほしいのは体ではなくて歌声である。
抑揚が感じられない上に、長い曲だ。超長い。
ずっと傑作ばかり聴かせられてたら疲れるから休憩の時間なのかな、なんて思いながらちょっと目をつぶってみたり…。
しつこくライブで演ってたら Early Roman Kings みたいにとてつもない進化を遂げるのかもしれないが、それはこの日ではなかったらしい。


17曲目の All Or Nothing At All も、私にとってもともとよく分からない曲である。シナトラバージョンは聴いていたのだが、勉強不足のままライブに来てしまった。ボブのバージョンを聞いたら分かるのかなと期待していたのだが、やっぱりよく分からなかった。
新譜で聴きこむと分かるのかもしれない。


18曲目はおなじみ Long And Wasted Years
2014年の時はこの曲で盛り上がった。Tempest の中で Pay in Blood Duquesne Whistle の次くらいにかっこ良い曲だと思う(♪They may be dead by now!!! ←これがツボ)。
しかし、この夜は少し力尽きた感が否めなかった。バンドの音ばかりが派手に鳴り響き、ボブの声にパワーが感じられなかったのだ。少しバランスが悪い。16、17、18曲目と疲れがあったのか勢いを落とした印象である。


19曲目の Autumn Leaves 。やはり声は出ている。Shadows in the Night からの選曲だからだろう。
いや、だがしかし…。
「枯葉」をボブが歌う必要、あるのか????
すでに多くのアーティストがカバーしたシャンソンだ。ジャズのスタンダードにもなっている。もはや普通に歌ったところでなにも特別ではない。ボブもまた然り。
Shadows in the Night の選曲の中で、これだけがどうもボブらしくなくて、混乱したものだ。アルバムの中だけならまだしも、まさかライブでこれほど歌っているとは。
以前、ビートルズの「イエスタデイ」をボブが歌っているのを聞いたことがあるが、あれは衝撃だった。もういちど聴きたくても、あの音源にはなかなか巡り会えない。あれこそ幻の一曲だった。「枯葉」もライブで披露するだけなら貴重な曲になっただろうが、近作のアルバムに入ってて、しかもしょっちゅう歌ってるきたら…。「枯葉」やるぐらいならオリジナルの曲を演ってほしいなぁ…。それがファンの率直な意見ですぜ、ボブ。


ここで一旦の終了。
なにも言わずに去るボブとバンドたち。
アンコールの手拍子が早くなっていく。
「相手は74歳だぞ。もっとゆっくりさせてあげたらいいのに」と思うのは私だけだろうか?もしかしたら皆、あまり急かすのも良くないと知りつつ、拍手し続けないとボブが帰ってしまうのではと焦っているのかもしれない。確かに、それは困る。


20曲目はお待ちかねの Blowin' In The Wind
私はこの曲をファンサービスだと思ってるから大して待ち望んではいなかったのだけど、この夜の「風」は違った。まさにハイライトと言っていい素晴らしい「風に吹かれて」だった。
ドニーだっただろうか?ヴィオラを持ってボブのそばに立った。滑らかにイントロを奏で始める。何が始まるのかとワクワクした。ボブはピアノに伸びやかな声。2014年のライブバージョンではアレンジが凄まじすぎて原曲を留めていなかったが、今回は「風に吹かれて」らしさをずいぶん残していた。音のバリエーションも素晴らしい。明らかに、ここにもうひとつの「風に吹かれて」が誕生していた。「風に吹かれて」でこんなに感動するとは、正直思っていなかった。
この選曲はファンサービスみたいなところもあるのだろうが、もはやボブの新たな進化においてはどの曲を歌うのかなど、どうでも良いことなのかもしれない。


21曲目、ラストは Love Sick
ラストに Love Sick ??
でも2015年の春まで Love Sick はインターミッションの手前に配置されていた。ボブにとって一区切りつく、そんな曲なのかもしれない。
この暗く重々しいラブソングでボブは客席へ最後のメッセージを送るのだ。

 I’m sick of love; I wish I’d never met you
 I’m sick of love; I’m trying to forget you  

 Just don’t know what to do
 I’d give anything to be with you....


終演。
拍手と同時に思わず立ち上がった。周囲の人も次々と立ち上がり、両手を挙げてボブを呼ぶ。
みんな拝んでるみたいだ。
まるで宗教だと思った。ボブは神か?
かくいう私も、両手を挙げていた。
叫んで崇めてひれ伏した。
バンドマンたちが真ん中に集まり、かるく会釈をする。ボブはその中心でふんぞりかえってポーズを決める。
いや、マフィアだろ。
マフィアにしか見えない。
ボブというゴッドファーザーを擁するファミリーだろ、絶対。
私たちが堪能したのはボブ・ディラン個人ではなくボブというゴッドファーザーを擁するバンドの音に違いない。

マフィア御一行は、やはり何も言わずに暗闇に消えていった。


熱気とともに会場を後にした。

もちろんSS席の特典ポスターも忘れずにゲット。

フェスティバルホールへは、おけいはん(注1)で来ていたが、帰りは連れと感想を言い合いながら歩いて帰路に着いた。
そう、歩いてこれる場所でボブ・ディランのライブを見てしまったのだ。
こんなことあっていいのかしらん。
中之島の広い道路と、ときどき遭遇するテラスで一杯やる人、ジョギングに励む人とすれ違ったりしていたら、外国の街にいる気分にさせられた。パリか、ここは。
まぁ、少ししたら天満の喧騒に呑まれてしまうのだが。


特典ポスター

(注1)おけいはんとは…京都と大阪の中心部を走る電車の愛称。初乗りは高い。


【関連記事】
4/12のライブレポ in 大阪フェスティバルホール①
4/12のライブレポ in 大阪フェスティバルホール②


Discussion

Leave a response