フレドリク・ウィキングソンという男②
Posted on 2014年11月30日日曜日
前回のポストの続きをしよう。
11月23日、フィラデルフィアで行われたボブのライブはプライベート仕様で行われた。
観客は一人。
男の名はフレドリク・ウィキングソン。41歳(↑ 写真ちょっと若いな)
スウェーデンのTVパーソナリティ兼ライターだ。
上の写真の奥に写っているのは彼の相方、フィリップ・ハマー。
二人でTV番組を執筆したり番組ホストを務めたりしているらしい。
ではなぜ彼がボブ・ディランのライブを一人で聴いたりすることができるのだろうか。
一応言っとくけど私は英語も苦手だが、当然スウェーデン語など読めないのであって、情報は曖昧だったり誤解している部分があるかもしれない。
毎回そうだが、今回は特にその点をご了承いただきたい。
まず、ざっくりとフレドリク・ウィキングソンの正体を明かしておこう。
前述したように、彼はスウェーデンのTVタレント兼ライターである。
ゲイではないらしいが、相方との際どい触れ合いをジョークにしている。

2003年に「High Chaparall」という番組で二人はアメリカを舞台に「あの人は今」的なロケを担当。多くの有名人にインタヴューをする。
2005年にはニュージーランド、東京、クック諸島とエストニアを訪問する旅番組に出演。ニュージーランドでは合法ドラッグを試すなど、ユニークな番組を作った。
2006年、番組「Ett herrans liv」のスウェーデンの有名人を紹介する企画で、当時の首相に会う機会を得る。番組が評価されこの年、スウェーデンのテレビ賞、Kristallen賞を受賞。
その後、二人は徐々にデンマークやノルウェーなど近隣諸国にも知られるようになる。
現在はテレビ、ポッドキャストを中心にトークショーなどで人気を博す。
スウェーデン国内では「ディラノロジスト」して知られており、あの「Expecting Rain 」の会員でもあると噂されている。
さて、それでは本題だ。
11月23日のこの日、ボブはフィラデルフィアのステージで、前から2列目にただ一人座っているフレドリク・ウィキングソンのために演奏した。
バディ・ホリー、ファッツ・ドミノ、チャック・ウィリス…そして未知のブルース…。
ウィキングソンはショーの前、座席を決めるのにかなり時間をかけ、2列目を選んだ。
「最前列じゃやりにくいかと思ったんだ。僕はまさにレストランで2番目に高いワインを選んでいるかのようだった。それっていかにもスウェーデン人らしい行動なんだけどね。それで2列目が一番いいかと思ったんだ。」
ボブ・ディランの「超」ファンであるウィキングソンは、コンサート中はまるでドラッグを使ったように陶酔し、あまりに顔がにやけすぎて顎が痛いほどだったという。
暗いステージ上に一人の男が登場し別の誰かに話しかけ振り返ると、紛れもなくそれはディランだった。ボブはウィキングソンを見つけるとうなづき、そのままショーを始めた。
バディ・ホリーの Heartbeat が始まった時、ウィキングソンは感激した。
「クリスマスの朝のようだった。僕はディランのファンになる前からバディ・ホリーが大好きだったんだ。」
一曲目が終わった後、ウィキングソンは一生懸命拍手をしたが、誰も聞いていなかった。
「とってつけたかのように聞こえたかもしれない。だから二曲目の後には何か言うべきだと思った。」
二曲目の後、彼は叫んだ。「君たちは素晴らしいよ!」
するとボブが噴き出した。
「二人の子供の誕生も感動モノだったけど、僕のバカなコメントでボブ・ディランが笑うなんて、とても信じられないような出来事だったよ。」
It's Too Late の終盤にはボブがハープのソロを始めた。
「ディランがハーモニカを吹くたびに大声を出したり拍手をしたりする奴を僕は憎むね。でも僕は彼がハーモニカのソロを始めた時にはほとんど泣いてたんだ。」
そしてショーは謎のブルースで幕を閉じる。
「よく知られた曲なのかもしれないから、分からなかったのは恥ずかしい。でももう一度聴いたら何だったのか分かると確信してる。」
ショーの後、ボブはウィキングソンに「いつでも寄ってくれ」とだけ言ってステージを去った。
「ディランは、二度と起こらない奇妙なことが起きたのだということを強調するようだった。本当に凄い体験だったよ。」
この夜、ボブは同じステージでいつも通りの公演も行った。
もちろんセットリストは「Tempest」を中心とした例の固定リストだ。
ウィキングソンはこれには足を運ばず、プロデューサーとカラオケに行ってボブ・ディランの曲を熱唱したという。
実はこのライブの模様は、合計8台のカメラによって撮影されている。
この公演はスウェーデンのドキュメンタリーフィルム「エクスペリメント・エンサム(エクスペリメント・アローン)」の一環で撮影された。
ここでは「通常なら大勢の観客に向けて行われる出来事を一人で体験する」という実験が行われているらしく、過去にはコメディクラブやカラオケバーなどが舞台となった。
このシリーズのディレクターAnders Helgesonはウィキングソンの友人で、ボブ・ディランの企画を話した時、ウィキングソンは被検者になることを懇願したという。ボブは非公開のギャラで本作への参加を承諾。ウィキングソンにその金額は知らされていない。(通常のギグより遥かに高い金額だと推察される)
この映像は15分のドキュメンタリーとして12月にYouTubeで公開される。
もう一度言うよ。
この映像は15分のドキュメンタリーとして12月にYouTubeで公開される!
うわー、なんだかよく分からないふざけた企画だと思った自分を大いに反省します(本当はまだそう思ってる)。
ウィキングソン氏は言う。
「ファンは、僕がそこに座ってるという事実を憎むかもしれない。でも本当にクールな映像だよ。素晴らしいサウンドだった。」
こいつには職権濫用臭がちょっとするけど、あたしも「ボブのハーモニカにいちいち奇声をあげる奴」は苦手だな!
初めまして、長らくボブ・ディランのファンをしている者です。
返信削除ネット上にいろいろなディラン関係のページがありますが、こんなにおしゃれで、かつふざけ半分のブログは珍しいので、更新をいつも楽しみにしています(英語が苦手なので、海外の情報なども載せてくれるのもありがたい!)。
15分のミニライブ、超わくわくしています!解禁されたら、いちはやく報告頼みます!!
閲覧ありがとうございます!
削除ただのファンブログとしてノビノビやるつもりで始めたのですが、今年はボブが活躍しすぎて追いかけるだけでも大変でした。
15分のドキュメンタリーについては近いうちにポストするので是非読んでください。
あくまでのんびりやるブログなので情報は早さ、内容ともに充分ではないかもしれませんが、情報だけに偏らないように面白く読めるブログを目指しています。
今後もよろしくお願いします。