偽ボブによろしく

Posted on 2015年1月23日金曜日

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
2015年も本ブログ「今日のボブ」とボブ・ディランをどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて新年一発目の話題は、一年前のアレについて。

コレ。

誰これ?って思う人、いると思う。
いるよね?

これは一年前の、2014年2月2日スーパーボウルのハーフタイムで流されたクライスラー200のCMに出演したボブ・ディラン。
あくまで「クライスラーのCMに出演したボブ・ディラン」であって「ボブ・ディラン」ではない、と私は信じている。
この映像に映るボブ風の男についての憶測は世界中でひっそりと飛び交っていた。
私のようなしつこい人間とは逆に「化粧のしすぎ」「ライトの当てすぎ」「ヒゲを剃ったから」「髪を染めたから」と適当に(もしくは頑張って)受け流すファンも大勢いて、日本では後者が圧倒的多数だったようだ。

替え玉?ありえない!

そう思ってか、替え玉説を唱える人は実はそう多くない。
私もCMを何度か見てはどこか納得できるところに着地しようとしたのだが、見れば見るほど最初の「誰これ?」感は増すばかり。

さぁ、ここらでハッキリさせようではないか。
いざ真実の探求に、共に踏み出そう。

問題のCM ↓



バックでは Things Have Changed が流れている。

ボブは言う。

「アメリカよりもアメリカらしいものなどあるだろうか?
オリジナルを輸入することなど無理なのだ。
本当にクールなものに見せかけることも、
遺産を複製することも出来ない。
デトロイトで作ったものが最初だった。
そしてそれが他国のインスピレーションとなった。
そう、デトロイトは車を作った。
そして車がアメリカを作った。
最高のもの、極上のものを作ることは、確信となった。
あらゆる業種の、すべての男と女の心や魂を、誰も輸入することは出来ない。
より純粋なものを世界中から探すことはできる。
しかし、アメリカの道路に適した、そこに生息する生き物は発見できないだろう。
なぜなら我々はズーム(車の唸る音)を、轟音を、推進力を信じているから。
それはここで、一つのものから作られる。
それはどこからも輸入できないもの。
アメリカの誇り。
ドイツはあなたのビールを醸造し、
スイスはあなたの時計を製造する。
アジアはあなたの携帯電話を組み立てるだろう。
我々は、あなたの車を造るのだ。」


国粋主義的な商業CMにおけるボブの登場は、多くの視聴者にショックを与えたらしい。
Things Have Changedは皮肉と取られ「変わったのはボブ」「芸術に反する」と嘆く者、「ファンの望む方向とは常に逆のことをするのがボブ」と冷静な者、「アメリカの誇りはインポートできない?外国の品質がアメリカにインポートできないのと一緒だね」「車のセールスマンかwww」とバカにする者など反応はさまざまだった。

もちろんボブが商業CMに出たのは初めてではない。
2004年 女性下着ブランドのヴィクトリアズ・シークレットのCMにキメキメの化粧で出演
2006年 Apple・iPod (Modern Timesの宣伝も兼ねて)のCM
2007年 キャデラック・エスカレード
2009年のスーパーボウルではウィル・アイ・アムとペプシのCMでコラボ、Forever Young の楽曲のみ使われた。
2014年 Chobani というメーカーのヨーグルトのCMに I Want You を楽曲提供。
最近ではジープのCMでも楽曲が使用された。




ボブ自身が出演するCMの共通点は意外にも「ちゃんと映らない」ことだと思う。
演出の意図にもよるだろうが、キャデラック・エスカレードでは深々と被った帽子にサングラス、横顔、少し遠目から映る姿。ボブには間違い無いが、なんだか「遠い」という印象。
iPodのCMではシルエットになっていてほとんど真っ黒。ギターを弾く指だけがよく見える。
逆にヴィクトリアズ・シークレットではどアップ過ぎて、ゆっくりボブを鑑賞したいファンにとってはなんだか疲れる。キメ顔を続けているのはとてもいい。

では昨年のクライスラー200のCMについて検証しよう。

私は正直言って「アメリカの誇り」とか超どうだって良くて、ボブが愛国者かどうかなんて議論するだけ妙な話だ。ボブは右でも左でもない。
本人曰く「わりと中央寄り。中央あたりでそれより少し上」なのだそうだ(若い頃の話だけど)。

私にはそんなことよりもまずボブの見た目の方が気になって仕方がない。

そっちの方が重要だと思う。

だって本人じゃなかったら、アメリカの誇りとかドイツはビールとか余計にどうだっていいじゃん!!!!

もちろん、ボブの顔に違和感を覚えたファンは大勢いて、「2ヶ月前にライブで見た彼と全然違う!」「なんだかボブに見えない」「10年分ぐらい若い」と皆口々に言っている。
「美容整形だったら最悪!」「美容整形ではないと思いたい」と整形疑惑も浮上した。
しかしその後2014年3月に来日したボブは疑いようもないいつものボブだった。髪の毛は若干黒く感じたけれど。
コアなファンの中には「ボブがしゃべってると分かるのに時間がかかった。デジタル処理で声が変わっているのか?」と声まで疑う始末(実際、私もナレーションの声は滑らかで高いと感じる)。

検証 Ⅰ 顔の角度

これまでのCMと比べると、圧倒的に違うのはボブの顔の角度。
ボブの多くのジャケット写真が右向き(正面からは左向き)であるのは周知の通りだが、同様にCMでもボブが正面からのショットに臨むことはほぼない。
だとすると、クライスラーのCMはあまりに正面過ぎないか???
正面ばかりだ。笑える。
別人であることを前提として考えると、この現象の原因は「正面からならボブ・ディランに見えるから」だろう。
正面からの顔を比較してみる。
う〜ん、鼻が似てる。顎も似てる・・・かな。
でも「目」が全然違う。
(もしかしてこの記事を読みながら「こんな真剣にならなくても両方ボブじゃんw」って人いるのかな。その人には私ってすごくマヌケに見えるんだろうな。)


検証 Ⅱ 顔のパーツを比較してみる
メイクによって顔を変えられたとしても、「耳」を変えることは難しいと聞いたことがある。
耳たぶの形や、耳介のせり出し方などは人によって違うし、顔の印象を決める大事な部分とも言えそうだ。
また顔の細かいシワも、その人の日々の表情によって少しづつ刻まれていくものだから、隠すことも似せることも難しいのではないだろうか。

着目したのは

①目頭と眉間
②耳たぶ
③口元のシワ

である。

①ボブは眉間にいつもシワを寄せていて、特に左眉の方をよく動かす。
上記の比較写真では、左眉の動きが似ている。眉間のシワの形もよく似ている。
ボブの目は二重だが、年を取って垂れ目になってきたからか開き方が細くなった。画像では「クライスラーのボブ」の目は左のボブの目よりも大きく開いている。目頭のくぼみだけが少し似ている。

②耳たぶの形は、意外にもそっくりだ。耳たぶの少し上にある盛り上がった耳介の部分まで似ている。これはもしかして・・・。

③衝撃的だ。口元をよく見て欲しい。両画像とも鼻から伸びるホウレイ線が口元で二本に分かれ、かつ一本の短いシワが顎に向かって伸びている。「クライスラーのボブ」は化粧で埋めているのか、何かを注射でもしているのか、シワがややふっくらしていて目立たなくなっている。こんなにもシワが酷似する人物がいるものだろうか。

信じたくないが、もしかしてこの人、ボブなのでしょうか?

目がぱっちりしているのは、こういうのを使っているからなのでしょうか?

忘れていた。
ボブは根っからの化粧好きだった。

検証 Ⅲ やっぱりそっくりさんだった

ジャック・ミーズというボブの歌をそっくりコピーするシンガーがいる。
トリビュートシンガーというらしいが、いわゆる「物まね芸人」みたいな人なんだと思う(芸人というと聞こえが良くないか。ちゃんと自分の音楽活動も続けている人です)。
一部で「クライスラーのボブ」はこいつなのではという噂があった。

Jacques Mees



表面的にはそんなに似てないな。
この人の方が目がパッチリしてるし、骨格も大きそうだ。

「クライスラーのボブ」が化粧を施したこいつだったとしたら、ナレーションの声もこいつかもしれない。
確かに鼻は似ているし、唇の形も似ている。
目もメイクしたらあんな風になるのかも…。
歌声も真似てるみたいだし…。
しかし、顎はどうだ?
耳はどうだ?
鼻の穴の形が違うぞ。

結論
とうとうこの時が来た。
たぶん、あれはボブだったのだろうと思う。
あんなに偽物を信じて疑わなかった私がこんな結論に達するとは、自分でも驚きである。
今でもまだ信じられない。
本当は、あんなボブは嫌だ。
しかしあの「口元のシワ」を発見してしまった今は、認めざるを得ない。

化粧。意味の分からないCMへの出演。
私たちの目を混乱させ、全く意味のない議論を戦わせる、それがボブ。
紛うことなくボブ・ディランそのものではないか?
しかし、私にはまだ信じたくない思いがある。
やっぱり、あんなボブは嫌だ。
かっこよくない。

今回はこうした結論に達してしまったが、今後私の考えが変わる可能性も無いとは言えない。
今日よりも、明日の方が真実に近づく可能性があるのだ。
このことに懲りずに、粘り強く調査を続けようと思う。


でもあのCM、見返すの嫌なんだよなぁ。



おまけ
2012年のスーパーボウルのハーフタイム、クライスラーのCMにはクリント・イーストウッドが出演していた。
ボブと違って、イーストウッドはほとんど出てこず、最後に少しだけカメラ目線になる程度。
「今はアメリカのハーフタイムなのだ。人々は失業し、辛い思いをしている。デトロイトの人々は全てを失ったが、車で再び立ち上がる。我々は共に勝てるだろうか。この国は一発のパンチで試合終了になどならない。我々の後半戦が始まろうとしている。」
この後でスーパーボウルの後半が始まると思うとちょっと笑えるけど、CMの作り方は至ってシンプル。
内容も無難だし、映像もカッコつけてるだけで特にツッコミどころはない。
そういう意味では、ボブの方がずっと面白かったと言えるかもしれない。
そう、面白さだけはあった。

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